最近外来に来てくれる患者さんがいつもと雰囲気が違ったり、いつもよりストレスが溜まっているなと感じたりすることが増えました。
上司にすすめられて読んだ本です。
少しだけかいつまんでまとめておこうと思います。
ぜひたくさんの人に呼んでもらいたい本です。
大人の読書感想文のようなものです。
参考:コロナのせいにしてみよう 國松淳和先生著
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
★コロナで変わってしまった人たち
・コロナの前だったら絶対やらなかったことをしたり、絶対言わなかったことを言い始めたり。
・忍耐強い人や穏やかな人が、なぜか急に怒りっぽくなったり。
普段とは違う、その人らしくない言動や行動をし出す。
國松先生はそういう人たちの状態を
COVID-19/ Coronavirus-induced altered mental status, CIAMS(シャムズ)
とよぼう、と言ってます。
大事なのは病名ではない、ということです。
シャムズは医者に判断させるのではなく、周りの人(一般の人)が判断するものです。
★シャムズってどんな仕組み?
シャムズの病態は「精神的加重」
身体疾患(脳の障害)があると、転換性の症状が出現しやすくなる。そのメカニズムは身体疾患があると、軽微な認知機能障害や意識の低下を生じ、それによって通常であれば適応できていたイベントに対応できずに、転換症状を引き起こす、というもの。
からだの病気のせいで、脳の具合が悪くなっていろんなことが立ち行かなくなり、別のおかしな症状に置き換わってしまう。
例)つらいことがあって苦しんでいるうちに片方の足が動かなくなった。(診察や検査などもきちんとして他の病気じゃないことを否定した後に、転換症状と判断します)
(このあたりは、私も少し難しく感じました。くろうとなのに恥ずかしい)
★シャムズかも、と思うのはあなた
医師ではない。(診察室では”よそいき”)
普段のありのままを見せている相手がシャムズに気づくことができる。
いつもと違うなと見抜けるのは、これを読んでいるあなた。
★どこに注目?
行動や発言の質の変化に注目しましょう。
・平素言っていたことと違うことを言い出した。
・普段ならおよそやらないことをやりだした。
★シャムズの種
不安です。このコロナ禍で不安になるのは当たり前です。不安の伝播力は著しいです。
シャムズが成立する前提として、「情報を得ている」という要素がある。
一人暮らしはシャムズのリスクが高い。高齢者の一人暮らしは特に。
テレビはわかりやす過ぎるので、不安増幅という副作用が大きい。情報に食らいつくのをやめましょう。ラジオはおすすめ。
★シャムズかなと思ったら
その時点で声掛けをしてください。実際に会ったり、直接電話したりという会話でなくてもいいのです。今であればLINEなどのSNSやメールでもよいです。
声をかける相手:周りの人全員。人間でも人間でなくてもよいです。元気でも元気でなくても。
しゃべる内容:雑談がよい。なんでもよいが、くだらないほうがいい。文字だけでもよい。
★コロナのせいにしてみよう
仲のいい人とカジュアルにエクスプレッシブ・ライティング(expressive writing)をしてみよう。
やり方)自分が感じているストレスや嫌なことを全部箇条書きにする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
自分の変化と周りの人の変化に気づこう。
この体調不良って、なんだろう。
病院に行っても検査しても、何も悪いところはないと言われるし…
最近イライラする。人にあたってしまったりする。
どうしてだろう。
もやもや…
きっと今の世界にはこんな人がたくさんいるはずです。(私も含めて)
私も何かよくわからないストレスによって、自分が追い詰められている感覚に陥っていました。
助けてあげられるのは自分自身であり、あなたです。
シャムズとあえて名前を付けられたのは(これは私の推測ですが)、不安というものは正体がわからないから増幅していくものだから、なのではないでしょうか。
コロナ前の時代に普通に診療をしていても、結果として治療法が変わらなかったり、あまり有効なものがなかったとしても、「病気の名前がわかってよかった。すっきりしました」と言われる方は、少なくありません。名前を付けることができるだけで気持ちが少し救われるという意味では、シャムズという名前を付けてくださったことに感謝です。
そして私たちは外来に来た患者さんの症状を聞き、きちんと身体疾患を鑑別し、除外した上でシャムズのことを頭に思い浮かべることができればいいのかなと思います。
最後に、この本を是非読んでみてください。値段以上の価値がある本だと思います(ちょっとえらそうだったらすみません)
一応COIはありません笑