備後家庭医のきまぐれ日記 ~ふりかえり備忘録~

備後地区家庭医のログ、ふりかえりを兼ねた日記です。きまぐれに更新しますのでのんびり見守ってくださるとうれしいです。

ネフローゼ症候群

CQ1:ネフローゼ症候群と診断した際のマネジメント(どこまで診断してどのような治療を行うべきか)

 

CQ2:腫瘍に合併するネフローゼ症候群(膜性腎症など)があるが、どんな種類の腫瘍に多いのか。寛解していてもリスクはあるのか。

 

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★成人ネフローゼ症候群の診断(ガイドライン2017)

1 .蛋白尿:3.5 g/日以上が持続する.
  (随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が 3.5 g/
gCr 以上の場合もこれに準ずる)
2 .低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0 g/dL以下.
  血清総蛋白量 6.0 g/dL 以下も参考になる.
3 .浮腫
4 .脂質異常症(高 LDL コレステロール血症)

 

※赤字が必須 

 

★成人ネフローゼ症候群の治療(Hospitalist 腎疾患2)

ACE-IやARBに加えステロイドを導入する

 

・微小変化型(MCD)

PSL0.8~1mg/kg/dayで開始し、寛解後1~2週間は同量で継続したのちに緩徐に減量する。

1~2年程度は5~10mg/日程度の少量のPSLを継続したのちに中止を検討する。

ステロイドへの反応性が良く寛解率も良好であるが、再発が30~70%と高い。

 

・巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)

原発性のFSGSではPSL1.0mg/㎏/dayで開始

 

・特発性膜性腎症(IMN)

PSL0.6~0.8mg/㎏/dayで治療を開始する。

 

 

リツキシマブも近年適応となっているが、もう少し様子見のほうがよさそう…?

エビデンスが少ない(特に寛解導入には現段階ではあまり勧められない)

 

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CQ2について

固形癌(膀胱,乳房,肺,膵臓前立腺,腎臓,大腸,胃など)
非ホジキンリンパ腫

読書記録②「コロナのせいにしてみよう」

最近外来に来てくれる患者さんがいつもと雰囲気が違ったり、いつもよりストレスが溜まっているなと感じたりすることが増えました。

 

上司にすすめられて読んだ本です。

 

少しだけかいつまんでまとめておこうと思います。

ぜひたくさんの人に呼んでもらいたい本です。

大人の読書感想文のようなものです。

 

参考:コロナのせいにしてみよう 國松淳和先生著

 

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★コロナで変わってしまった人たち

・コロナの前だったら絶対やらなかったことをしたり、絶対言わなかったことを言い始めたり。

・忍耐強い人や穏やかな人が、なぜか急に怒りっぽくなったり。

普段とは違う、その人らしくない言動や行動をし出す。

 

國松先生はそういう人たちの状態を

COVID-19/ Coronavirus-induced altered mental status, CIAMS(シャムズ)

とよぼう、と言ってます。

 

大事なのは病名ではない、ということです。

シャムズは医者に判断させるのではなく、周りの人(一般の人)が判断するものです。

 

★シャムズってどんな仕組み?

シャムズの病態は「精神的加重」

身体疾患(脳の障害)があると、転換性の症状が出現しやすくなる。そのメカニズムは身体疾患があると、軽微な認知機能障害や意識の低下を生じ、それによって通常であれば適応できていたイベントに対応できずに、転換症状を引き起こす、というもの。

 

からだの病気のせいで、脳の具合が悪くなっていろんなことが立ち行かなくなり、別のおかしな症状に置き換わってしまう。

例)つらいことがあって苦しんでいるうちに片方の足が動かなくなった。(診察や検査などもきちんとして他の病気じゃないことを否定した後に、転換症状と判断します)

 

(このあたりは、私も少し難しく感じました。くろうとなのに恥ずかしい)

 

★シャムズかも、と思うのはあなた

医師ではない。(診察室では”よそいき”)

普段のありのままを見せている相手がシャムズに気づくことができる。

いつもと違うなと見抜けるのは、これを読んでいるあなた。

 

★どこに注目?

行動や発言の質の変化に注目しましょう。

・平素言っていたことと違うことを言い出した。

・普段ならおよそやらないことをやりだした。

 

★シャムズの種

不安です。このコロナ禍で不安になるのは当たり前です。不安の伝播力は著しいです。

シャムズが成立する前提として、「情報を得ている」という要素がある。

一人暮らしはシャムズのリスクが高い。高齢者の一人暮らしは特に。

テレビはわかりやす過ぎるので、不安増幅という副作用が大きい。情報に食らいつくのをやめましょう。ラジオはおすすめ。

 

★シャムズかなと思ったら

その時点で声掛けをしてください。実際に会ったり、直接電話したりという会話でなくてもいいのです。今であればLINEなどのSNSやメールでもよいです。

声をかける相手:周りの人全員。人間でも人間でなくてもよいです。元気でも元気でなくても。

しゃべる内容:雑談がよい。なんでもよいが、くだらないほうがいい。文字だけでもよい。

 

★コロナのせいにしてみよう

仲のいい人とカジュアルにエクスプレッシブ・ライティング(expressive writing)をしてみよう。

やり方)自分が感じているストレスや嫌なことを全部箇条書きにする。

 

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自分の変化と周りの人の変化に気づこう。

 

この体調不良って、なんだろう。

病院に行っても検査しても、何も悪いところはないと言われるし…

最近イライラする。人にあたってしまったりする。

どうしてだろう。

もやもや…

きっと今の世界にはこんな人がたくさんいるはずです。(私も含めて)

 私も何かよくわからないストレスによって、自分が追い詰められている感覚に陥っていました。

 

 

助けてあげられるのは自分自身であり、あなたです。

シャムズとあえて名前を付けられたのは(これは私の推測ですが)、不安というものは正体がわからないから増幅していくものだから、なのではないでしょうか。

 

コロナ前の時代に普通に診療をしていても、結果として治療法が変わらなかったり、あまり有効なものがなかったとしても、「病気の名前がわかってよかった。すっきりしました」と言われる方は、少なくありません。名前を付けることができるだけで気持ちが少し救われるという意味では、シャムズという名前を付けてくださったことに感謝です。

そして私たちは外来に来た患者さんの症状を聞き、きちんと身体疾患を鑑別し、除外した上でシャムズのことを頭に思い浮かべることができればいいのかなと思います。

 

 

最後に、この本を是非読んでみてください。値段以上の価値がある本だと思います(ちょっとえらそうだったらすみません)

一応COIはありません笑

 

起立性低血圧

85歳女性

cc浮動感

1カ月前からふわっとする感じがある。朝の片づけをしているときに浮動感あり。

足に力が入らなくなるような、目の前が暗くなる感じ。

臥位になると落ち着く。

 

簡易tilt

臥位:162/90 75

1分後:122/80 86

2分後:102/68 82

5分後:91/52 83

 

便潜血陰性 貧血なし 脱水なし

 

 

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CQ:治療をどうするか ホスピタリストのための内科診療フローチャートより

まずは

★非薬物療法

・血管拡張作用のある薬剤・利尿薬を中止する

・患者教育を行い、失神が生じる状況を説明し、前駆症状が生じた際は速やかに臥位をとることを説明する。

・水分、塩分節酒を多めにする

・急速な体位変換を避ける

・弾性ストッキングを用いる

・夜間に就寝時に頭部を10度ほど挙上して眠る

・長時間の立位や温度の高い環境を避ける

・起立時足を交差して立つ

・起床前に500ml程度の水分を飲む

・運動習慣をつける

 

薬物療法

・血管収縮薬:ミトドリン(メトリジン®)、アメジニウム(リズミック®)、ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット®)

・ミネラルコルチコイド:体液量増加作用、末梢血管抵抗低下、心抑制性失神双方に効果あり フルドロコルチゾン(フロリネフ®)

・β遮断薬:末梢血管抵抗低下、心抑制失神双方で使用。ただし後者では少量から開始する。保険適応外。プロプラノロール(インデラル®)、メトプロロール(セロケン®)

予防医療 子宮頸がん検診

子宮頸がん検診ガイドライン更新されたので、少し勉強しました。

 

CQ:どんな人にどれくらいの間隔で子宮頸がん検診を勧めたらよいか。

 

 

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★日本のガイドライン GradeA

細胞診:20~69歳で検診間隔は2年毎。

HPV検査:30~60歳で検診間隔は5年毎。

 

GradeC 細胞診とHPV検査:30~60歳で5年毎

 

★USPSTF 2018

21~29歳:細胞診を3年毎

30~65歳:細胞診を3年毎、HPVウイルス検査を5年毎。もしくは両方を5年毎。

 

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高齢化率が高く、なかなかこの年齢の女性に会うことがないですが、会った時に声をかけられるようにならないといけませんね。

読書記録① 「ふるさとを元気にする仕事」

これは読書感想文に似た備忘録です。

私もそう思っていた!という言葉や、なるほどそう考えたらいいのかと思うことなどたくさんあって、勉強になりました。高校生から大学生向けの書籍ですが、大人にはとても分かりやすく説明してくださっています。言語化ができるということがすてき。

備忘録として今私の心に残ったものを書き留めておこうと思います。

 

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★「僕たちが解決しなければならない問題は、人口が減ること自体ではなく、減り方の中で生じる課題をどうやってみつけ、どう乗り越えていくかということ」p13

 

★”成長の限界

日本には人口が一億人以上いないと成り立たない仕組みが数多くある。

「これからはお金をかけずに福祉を充実させるアプローチを僕らは探っていかなければならない」p39

 

コミュニティの定義 p52

①地縁型コミュニティ:同じ地域に住んでいる人の集まりの 例)町内会

②テーマ型コミュニティ:同じ所属意識を持った人の集まり 例)○○連

 

★WHOが提唱する理想のワークライフバランス

「労働」「遊び」「休息」がそれぞれ8時間ごと

 

ヒアリングでは「僕らが知らないまちのことを教えてください」というのがよそ者の基本姿勢 p189

 

★『これから塾』の目的は知識のインプット

 

★『土の人』と『風の人』

 

★定住人口が減るなら交流人口を増やそう

人口規模は縮小しながらも、まちの営みは充実していく

”縮充”という未来を、日本のふるさとは描くことができる

 

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ふるさとを元気にしたいし、私は自分が楽しく生きることができて安心して死ねるまちにしたいと思っています。

そのために、ちょっとずつつながりが作れたらいいなあ。

そして、土の人として生きていけたらいいなあと思います。

 

ほんとに読書感想文になってしまった。

コロナ禍だからこそ、緩いつながりの必要性が明るみに出ている気がします。

予防医療 乳がん検診

症例:77歳 女性

PH:高血圧、脂質異常症、不安神経症

 

外来に報告に来てくださった。

「ふと自分で胸をさわるとしこりがあって、○○病院で精査し結果待ちです」

前回からの1ヶ月の間に、このようなことがあったとのこと。

ヘルスメンテナンスをいつまでするか、というのは正直はっきり自信がなかった。

嫌な意味でどきっとした。

 

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CQ乳がん検診はいつまでどんな検査を行うべきか。

 

乳がん検診★ uptodate

マンモグラフィ単独法(50~74歳:2年に1回) GradeB

ただし40歳から49歳の間はスクリーニングを行えば乳がんによる死亡を減らせる可能性はあるが、偽陽性が多く不必要な生検が増えてしまう。

 

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上記であることを考えると、77歳の女性にマンモグラフィを行うエビデンスは十分でないことになるが、何歳まですべきかというのはまだ現段階ではわからないだけという考え方もある。

家庭医である以上予防医療をきちんと実践できるようなシステムを作らなければ、日々に忙殺され、抜けていく気がする。

Next Step、ですね。

 

ぶろぐ、はじめました。

こんにちは。備後にこっそりいる家庭医です。

こうやって真面目に?ブログを書くのは初めてなので、どきどきしていますが、ふりかえりを兼ねて始めることにしました♪

日々に感じたことや気になった症例、勉強になったことや本などざっくばらんに適当に載せていきます。

これは自分の生涯学習にもなるし、一人でできるふりかえりの一つの形と考えて手探りで始めます。(一人でできるふりかえりも限度があるのも知りつつ)

お手柔らかに。