備後家庭医のきまぐれ日記 ~ふりかえり備忘録~

備後地区家庭医のログ、ふりかえりを兼ねた日記です。きまぐれに更新しますのでのんびり見守ってくださるとうれしいです。

読書記録⑫ 『外来診療によく効くBATHE法』

備忘録です。

章ごとにまとめがあって、時間がないときはまとめを読めばなんとなくわかるようになっている。

 

第1章 BATHE法:患者中心の医療を実践するためのキーポイント

★BATHE法

B:Background(背景) 最近生活はいかがですか?

A:Affect (感情) それについてどう感じますか?

T:Trouble(問題) 一番困っている状況は何ですか?

H:Handling(対処) どのようにして対応していますか?

E:Empathy(共感) それはあなたにとってとても大変なことでしょう。

 

面接の早い段階で患者にBATHE法を用いると、毎回すべての患者に対して効果的かつ効率的に構造化された精神療法を実施できる。

 

連続的に適用することにより複数の問題を処理することができる。

急性→解決策を見つけるための医師の積極的な役割を果たすことが有用

慢性→患者に問題解決の責任を負わせることが必要

一方で、医療者は患者の問題を抱えきれないと感じたらいつでも精神科の診察や紹介を考慮すべき。

 

第2章 受診した背景まで視野を広げる

 

病気とライフイベントへの適応との間には関連がある。

・人間は、ある特定の適応レベルで機能する

・身体疾患を含む重度のストレス下にあると、機能レベルが一時的に低下する

このような状況下では

統制の所在が内側にある人→自分は有能であり状況を制御できていると感じさせる必要がある

統制の所在が外側にある人→依存できる状況を作ること、信頼できる権威者とのつながりを感じさせる必要がある。

 

「打ちのめされている」と感じている人は最適なレベルで機能することができない。

この時、人は「傾いた」状態となり、「神経質な地図」を使って世界と関わるようになる。健康的な自分としてもとに戻るまで、希望や自信を感じることはできない。この時、本人の基本的な受容性と有能さに関する情報を提供する社会的支援が極めて重要となる。

 

危機的状況への介入モデルは急性ストレスが持つ「期限」という特性をとらえるのに有効。危機的状況は一般に4~6週間以内に解決する。

・危機的状況への介入の目標

大まかに4つの目標

①悲惨な結果を防ぐこと

②個人の機能レベルを病前にまで戻すこと

③行動の選択肢を増やすこと

④自尊心を向上させること

 

第3章 健康増進と慢性疾患の管理

・健康増進への注目

人は動機を持ったときのみ行動する。動機は2つの信念からなる。

ひとつは重要性、もう一つは「自分はできる」という自信。

プライマリ・ケア医の仕事は、これらを患者に与えること。

 

・抵抗への対応

定期的な運動ができないあるいは食事のコントロールができないと言われた場合、「あなたは『まだ』そのやり方を知らないだけです」いえばよい。自信をもってそのように伝えれば、患者がライフスタイルを変える契機となりうる。

 

・動機付け面接

破滅的な行動をやめるよう患者に促すときに動機づけ面接を計画するとよい。

 

有酸素トレーニング、筋力トレーニング、柔軟トレーニングなど、日常生活動作を超える身体活動は1日30分以上を週に5回、つまり週に150分以上行うことが推奨される。

野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、豆類の摂取量を増やし、赤身肉や加工肉、果糖飲料、高精白の穀物の摂取量を減らすのが健康的な食事。

動機付け面接は、ライフスタイルを変えることへの抵抗を取り払うために用いられる。

BATHE法は、患者の生活がどのような状態化を確認し、自分は達成できるという自信を支援するのに有用

 

第4章 短時間で行う治療介入とその効果

実際の治療の介入は、主に情動的、行動的、人格的または精神的障害といった治療的な話し合いを通して実践される。

治療のゴールは、総括的(患者の気分をよりよくし、困惑を減らす)で漸増的(管理しやすいよう、少しずつ増やす)で具体的(自分は有能で他者とつながっていると患者に感じさせること)である。

 

精神療法のテクニックにある共通の要素

①治療への期待

②治療関係を結ぶ

③外的支店の獲得

④修正体験

⑤繰り返し検証する機会の提供

 

・様々な治療方法の有効なテクニック

行動療法、リラクゼーション法、物語療法など

 

・診療の場で介入のレベルを決定すること:PLISSIT(ぷりしっと)

どこまで患者に介入するかというレベルの指針

P:Permission(許可) ある特定の場面で起こる感情を押さえつけず感じるままに感じていいと許可を与えることは患者の能力を一つ開放することにつながる。

LI:Limited Information(基本的な情報の提供) 経験している感情の状態を説明するために基本となる情報を提供すること。

SS:Specific Suggestion(個別的な提案)患者の健康的で機能的な自己を引き出して建設的な問題対処行動を促していくために特定の戦略を採用するという具体的な提案を患者に与える。

IT:Intensive Therapy(集中的治療)先々まで予約のスケジュールを立て、特定の生活上の問題を解決するためにある一定の期間、患者をサポートする契約を結ぶということ。

 

第5章 ブリーフカウンセリングのパール

・患者の力を引き出すための価値ある戦略

患者に決める権利がある。医師はまず患者に選択肢があることを認識させそのうえですべきことを促す。

患者に提示できる3つの有効な戦略

①結果の考察をする

②時間が解決する手段を選択する(時ぐすり)

③選択しないことを選択する

 

問題解決のための3ステップ

1)自分は何を感じているか(実際の感情を分類)

2)自分は何を望んでいるか(具体的に目標を述べる)

3)自分は何をすればいいか(自分でコントロールできることに集中する)

 

患者が問題を解決するにあたって医師がサポートすると約束することが最も肯定的で治療的なメッセージになる。

患者には出来事には象徴的な意味があること(そしてこれは人それぞれに異なること)、すなわち、ある感情は昔の記憶によって引き起こされること、自尊心、制御感、愛情という感覚は、すべて過去の出来事の解釈によって影響を受けることを学んでもらう。重要なのは過去の出来事の解釈にとらわれすぎず、1日1日を大切に生きること。

 

第6章 15分のカウンセリングの構築

BATHE法はカウンセリングを組み立てるために使用する。最初の質問では患者の現在の状況、課題に対する報告、今回の受診までの間におこった、最もよかったこと、悪かったことに焦点を当てる。医師は常に患者の立場にたち、傾聴して、本人に対する関心を持っていることを伝える。

 

・苦痛を伴う状況に対処するための4つの健康的な方法

①積極的にその場から離れる

②状況を変える

③追加の支援を受けて状況を受け入れる

④状況を見直すまたは解釈しなおす

 

面接の最後には課題を与える

その際次回の面接ではその課題の成果の報告を待っているという期待を沿える。

15分の面接のうち約12分は患者が語り、医師は建設的な要素に焦点を当て短くコメントを伝える。制限時間は厳守。

 

第8章 良い面を強調する:BATHE法を肯定的に表現する

★ポジティブBATHE法

B:best 今週あるいは前回の受診から一番良かったことは何ですか

A:affect それについてどのように感じましたか

account それについてどのように説明しますか

T:thankfullness 何に最も感謝していますか

H:happen このことがもっと頻繁になるためにはどうしますか

E:empathyまたはempowerment 素晴らしいですね、そうなるように信じています。

 

感謝の気持ちが幸福感の増加と抑うつの減少に関連しているというエビデンスが増えつつある。現実的な楽観主義はよい結果と健康の質の改善をもたらす。

 

初診の患者、あるいは新たな症状を訴えるかかりつけの患者に対しては、標準的なBATHE法をもちいるといい。受診のきっかけを突き止める必要があるため。(数カ月ぶりに受診した患者に対しても同様)

経過フォロー中の患者に対しては「ポジティブBATHE法」を行う。