この本はまず、交渉する方法として「原則立脚型交渉」をお勧めしている内容である。
3章で成り立っており、1~2章をまずまとめておく。
いろんな例が出てきており、わかりやすい例もあれば難しい例もあった。
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内容のまとめ
当事者の基本的な利害、お互いが満足できる選択肢、そして公平な基準に焦点を合わせた原則立脚型交渉法は、立場の駆け引きとは対照的に、総じて賢明な合意をもたらす。
★立場駆け引き型交渉と原則立脚型交渉
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ソフト型 |
ハード型 |
原則立脚型 |
参加者 |
友人 |
敵対者 |
問題の解決者 |
目的 |
合意 |
勝利 |
効果的かつ有効裏に賢明な結果をもたらすこと |
友好関係 |
友好関係を深めるために譲歩する |
友好関係の条件として譲歩を迫る |
人と問題を分離する |
態度 |
人に対しても問題に対しても柔軟性を持つ |
問題に対しても人に対しても強硬に対処する |
人に対しては柔軟性を持ち、問題に対しては強硬に |
信頼 |
相手を信頼する |
相手を疑う |
信頼するしないとは無関係に進行する |
立場 |
自分の立場を簡単に変える |
自分の立場は変えない |
立場でなく利害に焦点を合わせる |
方法 |
提案する |
脅かす |
利害を探る |
最低線 |
最低線を明かす |
最低線を隠して誤信させる |
最低線を出すやり方を避ける |
和解 |
和解を成立させるために一方的に不利な条件も受容する |
和解の対価として一方的に有利な条件を強要する |
双方にとって有利な選択肢を考え出す |
答え |
答えはただひとつ 相手が受け入れるものを探す |
答えはただひとつ 自分が受け入れられるものを探す |
まず複数の選択肢を作り、決定はその後にする |
強調するもの |
合意を強調する |
自分の立場を強調する |
客観的基準を強調する |
意志 |
意志のぶつかり合いを避けようとする |
意志をぶつけ合って勝とうとする |
意志とは無関係な客観的事実に基づいて結果を出す |
圧力 |
圧力に屈する |
圧力をかける |
理を説き、理には耳を傾け、圧力でなく原則に合わせる |
★交渉における4つの基本的要素
①人:人と問題とを分離せよ
②利害:立場でなく利害に焦点を合わせよ
③選択肢:行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ
④基準:結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ
①人
人間は強い感情の持ち主であり、物の見方や感じ方がしばしばお互いにまるで違っており、また完全な意志の疎通は難しい。
相手方も自分も感情を持っていることを認識しよう。相手の人間的要素だけでなく、自分の人間的要素とも取り組まなければならない。
人の問題は、結局、認識の問題、感情の問題、意思疎通の問題の3つのカテゴリーに入る。
客観的真実の調査は確かに有益ではあるが、問題の原因であり、したがって、問題解決の道を開くものは、究極的には、各当事者がとらえた現実。
問題の状況を相手方の立場に立ってみる能力は交渉者の持つべき最も重要な資質。
コツがいくつかあるので提示
・相手を検討過程に必ず参加させ、結果に責任を取らせる。
しかも検討過程に参加させるのはなるべく早いうちが良い。
・自分と相手の感情を認識し、理解せよ
・感情は隠さず表現すると取り組みが楽になる
・相手の言い分をすべて言わせ、しこりを残すな
・感情の爆発に対しては反撃するな
あとは基本的ですが、アイメッセージ。
②利害
一旦表明した立場の攻防に交渉の焦点を合わせると、その背後にある利害を満足させるという交渉本来の目的がおろそかになってしまう。
コツの提示
・対立の原因となる「利害」を探せ
表に出た要求や言い分にこだわるよりも、本来の利害を調和させるほうがうまくいく。
なぜなら、どの利益にもふつうそれを満足させる案がいくつかあるし、対立する立場の背後には衝突する利害よりももっと多くの共通の利害が存在しているから。
・なぜ相手はそう主張するのかと問うてみよ 相手の主張も一理あると考えてみよ
・双方とも複数の利害があることに気づけ
・最大の関心は人間の基本的なニーズ(安全、経済的福利、帰属意識、認められること、自分の生き方を自分で決定すること)←マズロー?
・利害のリストをつくれ
・自分の利害を生々しく伝え、印象付けよ
・交渉の成功は強腰と、相手の提案を聞く率直さである。
ひとつの効果的な通則は、問題を攻めるのに劣らない積極さで相手を支持することである。
③選択肢
正しい解決策はただひとつと思ってしまう。
選択肢を多数用意するのを妨げる大きな障害
1)早まった判断をすること
2)単一の答えを探そうとすること
3)分け合うパイの大きさを一定と決めてかかること
4)相手の問題は相手が解決すればよいと考えること
ブレインストーミングをしよう。
・具体案と一般論を交差させて選択肢を増やせ
・異なるレベルの合意を用意せよ
・合意案の範囲を変えてみよ
・表面に現れない共通の「目標」を見極めよ
・脅すよりも信用を得る努力をせよ
④基準
合意は、お互いのむき出しの意志に左右されるのではなく、何らかの公平な基準を反映するものでなければならない。
・自分の主張に固執すると結局は高くつく
・客観的基準を打ち出すだけでスムーズに合意できる
・「一人がケーキを切り、もう一方が選ぶ」方式をとれ
基準は当時者の私意から独立していることが肝心。かつ、筋の通った実際的なものでなければならない
・手続きの平等感が双方に満足を与える
・客観的基準を見出す共同作業の形にせよ
・論理的に説得し、相手の論理も率直に聞け
・圧力に屈せず、原則や基準にのみ従え